【第60回】鼻紋は牛の指紋!10桁の番号で守られる食肉管理

土佐あかうしの魅力
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こんにちは!土佐あかうし先生🐂です。

前回は、和牛と呼ばれる4つの品種——黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種——のお話をしました。ひとくちに「和牛」といっても、毛の色も体つきもずいぶん違うのでしたね。

今回は、その1頭1頭をどうやって見分けているのか、という話です。スーパーの牛肉パックに、10桁の数字が印刷されているのを見たことはありませんか👀。あれは飾りではありません。牛の名札です。


■ 牛肉パックの10桁は、牛のマイナンバー

国内で生まれたすべての牛には、10桁の「個体識別番号」がついています。この番号を印字した耳標(じひょう)を、両耳に1枚ずつ、同じ番号で装着します。付けるのは、その牛を育てている農家です。

私も耳標の番号で牛を確かめることはよくありますが、名前を知っている牛は、やっぱり名前で呼びます。真っ黒な牛が何十頭並んでいても、耳を見れば取り違えることはありません。

そしてこの番号は、牛が肉になっても消えません。枝肉、部分肉、ロースやモモの精肉と姿を変えても、同じ10桁がついて回ります。だからスーパーのパックのラベルに載っているのです🥩


■ きっかけはBSEだった

なぜ、こんな大がかりな仕組みができたのでしょう。

きっかけはBSE(牛海綿状脳症)の問題でした。「この肉はどこの牛なのか」を誰も答えられない。そのことが、牛肉への信頼を大きく揺るがしました。

そこで2003年(平成15年)6月に、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」——通称、牛トレーサビリティ法が公布されます。牛肉の安全性への信頼を取り戻し、BSEのまん延防止を確実にすることが目的でした。同じ年の12月1日から、牛に耳標を付けて届け出ることが義務になります。

さらに翌2004年12月1日からは、売る側にも義務が加わりました。精肉の売り場に番号を表示すること。あのラベルに数字があるのは、親切心ではなく法律で決まっているからなのです📋

集まった記録を管理しているのは、家畜改良センターという国の機関です。


■ 10桁を入れると、何が分かる?

この番号、実は誰でも調べられます。家畜改良センターの「牛の個体識別情報検索サービス」というサイトに、10桁を打ち込むだけです。

出てくるのは、出生の年月日、雌雄の別、種別(黒毛和種や褐毛和種といった区分)。そして母牛の個体識別番号まで表示されます。さらに、出生地から現在の飼養地までの移動の履歴、と畜または死亡の年月日も分かります。

その牛がいつ生まれ、どこで育ち、誰の子だったのか。牛肉を買った人が、自分の手元から1頭の牛の一生をさかのぼれるわけです。すごい仕組みだと思いませんか🔍

もとになっているのは、牛を飼う側が1頭ずつ出した届出です。牛舎で書いた紙が、そのままあの検索画面になるのです。


■ 牛には指紋ならぬ「鼻紋」がある

ところで、耳標が落ちてしまったら、その牛が誰だか分からなくなってしまうのでしょうか。

いいえ。牛には、生まれつきの身分証があります。鼻です。

牛の鼻先——鼻鏡(びきょう)と呼ばれる、あの湿った部分には、細かい皺の模様があります。これを「鼻紋(びもん)」といいます。全国和牛登録協会の説明によれば、鼻紋は人間の指紋と同じように1頭1頭ちがう模様をしていて、しかも一生のあいだ変わらない模様なのだそうです。

和牛の世界は、この鼻紋を昔から使ってきました。子牛が生まれると「子牛登記」という手続きがあります。生後4か月以内に登記検査を受け、条件を満たせば生後6か月以内に「子牛登記証明書」が発行されます。その検査のとき、牛の鼻にインクを塗り、専用の器具で紙に写し取ります。採った鼻紋は証明書に貼りつけられます。書類の牛と目の前の牛が同じだと証明するためです。

最近は、スマートフォンで鼻紋を読み取るAIの研究も進んでいます。2021年には、牛に触れずにカメラで鼻紋を読み取る技術が、日本で特許を取りました。インクも保定もいらない時代が、すぐそこまで来ているのかもしれません📱



■ 最後に

牛の耳には10桁の番号、鼻には生まれつきの紋。牛は、二重に「自分が誰であるか」を証明できる動物です。

そして耳の番号は、食卓まで消えずについてきます。今度スーパーの牛肉売り場に行ったら、ラベルの10桁を探してみてください。お子さんと一緒にその番号を検索サイトに打ち込めば、肉になった牛の誕生日と、生まれた土地が画面に出てきます。

パックの10桁は、1頭の牛がたしかに生きていた証です。その数字の向こうにいる1頭を、少しだけ想像してみる。命をいただくというのは、そこから始まるのだと私は思っています。


🔔 次回予告
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