【第61回】牛の角の秘密:実は血も涙も通っている!?

土佐あかうしの魅力
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こんにちは!土佐あかうし先生🐂です。

前回は、牛の耳についた10桁の番号と、生まれつきの「鼻紋」のお話をしました。牛は耳と鼻で、二重に「自分が誰か」を証明できるのでしたね。

今回は、そこからもう少し上——頭のてっぺんの話です。牛の角は何でできていて、中はどうなっているのでしょう。「血も涙もない」という言い方がありますが、牛の角にかぎっては、まったく逆です🤔


■ 角は「骨」と「爪」の二階建て

奥州市の牛の博物館の解説によると、ウシ科の角は「洞角(どうかく)」と呼ばれる種類です。まず頭の骨——前頭骨から「角突起」という骨が伸びています。これが芯です。その芯に、ケラチンというタンパク質でできた鞘(さや)がかぶさっている。この外側を「角鞘(かくしょう)」といいます。

ケラチンは、私たちの爪や髪の毛と同じ成分です。つまり牛の角は、骨の芯に爪をかぶせた二階建てなのです。

シカの角は「枝角(えだづの)」といって毎年生え替わりますが、牛の洞角は違います。生え替わることなく、一生伸び続けるのです。


■ 角の中は、鼻の奥とつながっている

牛の頭の骨の中には、空洞があります。人間にもある「副鼻腔(ふくびくう)」で、そのうち額のあたりにあるものを「前頭洞(ぜんとうどう)」といいます。牛の場合、この空洞が角の中にまで伸びていくのです。

シェパード中央家畜診療所の池田哲平先生によると、成牛ではこの空洞は頭の中を迷路のように走っているそうです。子牛のうちは中身が詰まっていますが、育つにつれて角の内側が空洞になり、鼻の奥までひと続きになります👃

同じ先生によれば、角が折れたとき、鼻からツーっと鼻血が出てくることがあるといいます。出血しているのは鼻ではなく、角の根元。そこから出た血が、つながった空洞を通って鼻の穴まで流れてくるのです。

通っているのは血だけではありません。角の根元には皮膚が続いていて、血管も神経もあります。だから角の根元を触ると、ほんのり温かい。たしかに生きている体の一部だということが、手のひらで分かります✨


■ 切る牛と、切らない牛がいる

牛の角を切ることを「除角(じょかく)」といいます。

なぜ切るのか。畜産技術協会の『アニマルウェルフェアの考え方に対応した 肉用牛の飼養管理指針』には、こう書かれています。牛は、エサの取り合いや群れの順位を決めるために、ほかの牛に角突きをすることがある。それがけがや流産の原因になる。また、角による人の死傷事故を防ぐうえでも有効である——。

指針は時期についても書いています。ストレスが少ないとされる焼きごてで、生後2か月以内に行うことが推奨されています。子牛のうちに行うのは、まだ角の中に前頭洞の空洞が伸びていないからです。

大きくなってからの除角も「可能な限り苦痛を生じさせない方法により行うこととする」とあります。さらに農林水産省の『肉用牛の飼養管理に関する技術的な指針』では、角が頭の骨とくっついたあとに切る場合は、常に獣医師による麻酔薬の投与のもとで行うとされます⚠️

ただ、すべての牛が除角されるわけではありません。土佐あかうしは、除角しないことが多いのです。黒毛和種より温厚だといわれ、体の勝負でも分が悪いことが多い。そのうえ角まで落とすと、一緒に飼う黒毛にまったく歯が立ちません。対抗できるように角を残しておく——それが理由としてよく挙げられます。私が働く牛舎でも、黒毛は除角しますが、あか牛には角が残ったままです。

切るか切らないかは「当たり前」ではなく、品種や飼い方で判断が分かれます。血も神経も通っていると分かっているからこそ、いつ、どうやるかが決められているのだと思います。


■ 角は、その牛の履歴書

もうひとつ、角には浅い溝のような輪が入ることがあります。この輪は、ストレスを感じたときにできると言われています。

子牛市場で子牛を選ぶときの、一つの目安ともされています。輪が多い牛は「何か病気をしていたのでは」と見られ、あまり良い牛だとは思われないそうです。ただ、オスの子牛は去勢したときにできていることが多く、輪があること自体は珍しくありません。

生え替わらず一生伸び続ける角だからこそ、その牛が何を経験してきたかが、消えずに残るのです。



■ 最後に

牛の角は、骨に爪をかぶせた二階建て。中は鼻の奥までつながった空洞で、根元には血管も神経も通っています。飾りでも、ただの硬い棒でもありません。

牧場や動物園で牛を見かけたら、角の根元に目をやってみてください👀。そこは皮膚が続いていて、さわれば温かい場所です。浅い輪が見えたら、その牛が何かを乗り越えてきたしるしかもしれません。

角は、その牛が生きてきた時間そのものです。だからこそ、切るか切らないかにも、ちゃんと理由がある。牛を見る目が少し変わる話だと思っています。


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