こんにちは!土佐あかうし先生🐂です。
前回は、牛の巨体を支える「蹄(ひづめ)」と「第2の心臓」としての役割についてお話ししました。足元の神秘に触れた後は、いよいよ牛の「内側」へと潜っていきます。
皆さんは牛といえば「草を食べる動物」というイメージをお持ちですよね。しかし実は、牛は自分自身の力では草(食物繊維)を消化できません。では、どうやって700kg近い立派な体を作っているのでしょうか?
■ 牛の胃袋は「巨大な発酵タンク」
牛の体も草の繊維を分解する酵素を持っていません。そこで牛が手に入れたのが、「4つの胃袋」という特殊な消化器官です。
焼肉屋さんでお馴染みの部位で言うと、以下のようになります。🍖
・第1胃(ルーメン):ミノ
・第2胃(蜂の巣胃):ハチノス
・第3胃(葉状胃):センマイ
・第4胃(真胃):ギアラ
この中で最も重要なのが「第1胃(ルーメン)」です。胃全体の約80%を占め、ドラム缶半分(100〜200リットル)ほどの容量があります。
■ お腹の中に住む数百億の「住人」たち
第1胃(ルーメン)の中は温度が約39度で保たれ、酸素のない湿った環境です。ルーメン液1cc(スプーン1杯)の中に、なんと数百億個もの微生物が生息しています。
牛が草を食べると、この微生物たちが草の繊維を猛烈な勢いで「発酵・分解」し始めます。その過程で作り出される「揮発性脂肪酸(VFA)」が牛の全エネルギーの約70〜80%を賄っているのです。さらに寿命を迎えた微生物自体が第4胃で消化され、最高級の「タンパク質源」にもなります。
■ 牛飼いの本当の仕事は「菌を飼うこと」
私たち繁殖農家は毎日エサを与えていますが、ただ満腹にさせているわけではありません。「第1胃の微生物が一番元気に働ける環境をどう作るか」を常に考えています。
その要となるのが「ルーメンマット」と呼ばれる胃の中の層です。牛が食べた長い草(粗飼料)が胃の液体の表面に浮き、フタのような分厚いマットを作ります。このマットがあることで胃の壁が刺激され、健康のバロメーターである「反芻(はんすう)」がスムーズに行えます。
だからこそプロの農家は、エサの成分バランスだけでなく「何から与えるかという順番」に細心の注意を払います。
消化の早い穀物(濃厚飼料)を先に大量に与えると、胃の中が急激に酸性に傾き、微生物が死滅してしまいます。“まずは長い草でルーメンマットを作り、胃の環境を安定させてから穀物を与える”という工夫が不可欠なのです。
「牛飼いは、牛ではなく『菌』を飼っている」。この格言通り、菌が喜ぶ環境を毎日整えることこそが私たちの本当の仕事なのです。
■ 最後に
牛が草だけで生きていけるのは、お腹の中に地球最大級の発酵工場と無数の「菌🦠」という相棒を飼いならしているからなのです。
さて、この完璧なシステムである第1胃ですが、実は産まれたばかりの子牛には備わっていません。次回は、ミルクしか飲めない子牛がどのようにして草食動物へと成長していくのか、その不思議な「主役交代劇」を解説します!
🔔 次回予告
【第41回】胃袋は4つある?子牛が草を食べられるようになるまでの『主役交代劇』


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