【第31回】親牛ワクチン:初乳の中身を「設計」し、下痢を激減させる事前準備

専門技術とノウハウ
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 こんにちは!土佐あかうし先生🐂です。

前回の授業では、出生直後の初動を早める「Start-a-Life」の活用についてお話ししました。今回は、その初乳の中身、つまり「抗体」そのものをいかに強化しておくかという、分娩前の戦略について解説します。

子牛が生まれてから慌てるのではなく、親牛の段階で子牛の健康を「設計🧩」しておくことが、プロの現場では不可欠です。


【技術編を読む前の注意点】 ※本記事は、「経済動物」としての視点に基づいた繁殖経営のノウハウです。閲覧にご不安がある方は、[プライバシーポリシー‐免責事項]をご確認ください。


免疫の「バトン」を太くする

子牛は免疫ゼロで生まれてくるため、親牛の初乳に含まれる抗体の量が、そのまま子牛の初期の防御力🛡️になります。

自社では、この初乳の質を高めるために、分娩前の母牛に対して以下の2系統のワクチンを投与しています。

  • 呼吸器系ワクチン💉(生ワクチン): 牛ウイルス性下痢・粘膜病(BVD-MD)や伝染性鼻気管炎(IBR)などを予防するためのものです。
  • 下痢系ワクチン💉(不活化ワクチン): 主にロタウイルス、コロナウイルス、大腸菌による下痢を防ぐためのものです。

これらの投与スケジュールは、家畜保健衛生所(家保)と相談しながら、自社で独自のプログラムを組んで管理しています。


現場で感じる「効果のリアル」

正直なところ、呼吸器系のワクチンに関しては目に見えて効果を実感できる場面は多くありませんが、下痢系のワクチンについては、その効果を痛いほど実感しています。

北海道で働く知人の牧場などでは、一度下痢が蔓延すると止まらなくなり、重症化して子牛が次々と死んでしまうという壮絶な話😱を聞くことがあります。一方で、自社の現状はどうでしょうか。

私がこの会社に入ってから、確かに子牛が下痢をすることはあります。しかし、その下痢が重症化したり、激しい脱水を起こして立てなくなったり、ましてや死に至るようなケースは一度も起きていません。これは、ワクチンによって初乳中の抗体価が引き上げられ、子牛の「基礎体力」が底上げされている結果だと確信しています。


さらなる挑戦:母牛の「腸内環境」を整える

最近、ワクチン💉に加えて注目しているのが、子牛の腸内細菌叢(フローラ)を整えることでさらに下痢を防げないか、という点です。

子牛の細菌叢を良くするためには、まず母牛の細菌叢を整えることが近道だという考え方があります。例えば、生菌剤(ビオスリーなど)を母牛に給与することで腸内環境が整い、乳質の向上や子牛への免疫移行がよりスムーズになるという話も耳にしています。

この「母牛からのアプローチ」については、今後上司とも相談しながら実践し、その効果をまた共有できればと考えています。


最後に

今回は、子牛の命を守るための「親牛への先行投資」についてお話ししました。 ワクチンは、子牛を死なせないための最高の保険です。家保などの専門機関と連携し、自社の環境に合わせたプログラムを徹底することが、繁殖経営の安定に直結します。

さて、こうして設計された初乳ですが、母牛の状態(乳房炎など)によっては、どうしても不足したり質が伴わなかったりすることがあります。

次回は、そんな「もしも」の時に命を繋ぐ、初乳製剤の活用と現場での判断基準についてお話しします。


🔔次回予告

【第32回】初乳の補完:不足分をどう補う?初乳製剤の活用と現場での判断基準

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